この記事では、書評・ブックレビューとして、パフォーマンスに関する書籍を取り上げます。
今回取り上げるのは、
デビット・ケイ「マジシャンのためのウケるキッズ・ショーの作り方」スクリプト・マヌーヴァ 2013年
です。
※本書は、マジシャンやパフォーマー向けの専門書籍になります。
キッズ・ショーの作り方の原理原則を丁寧に解説

「ウケるキッズ・ショーの作り方」は、以下の5つのパートで構成されています。
- パート1 基本中の基本から
- パート2 キッズ・ショーにおける心理学
- パート3 受けるマジックの作り方
- パート4 よくある問題の解決方法
- パート5 ショー全体を調整する
ニューヨークでキッズ・ショー専門のマジシャンとして第一線で活躍してきたデビット・ケイ氏が、子どもの人気者になるためのノウハウを、心理学を交えながらわかりやすく解説しています。
- キッズ・マジックを理解するための考え方
- アシスタントの子どもの力を最大限引き出す方法
- 笑いの入れ方
- よくあるトラブルと対処法
などを学ぶことができます。
翻訳でない英語の本のタイトルは「Seriously Silly」です。おバカなことをやっているけど、真剣にやっているんだという著者の誇りを感じるタイトルです。日本語に訳しにくいですが、このタイトルに隠されたプロとしての誇りを本の中から随所に感じることができます。
子どもの心理学を学べる貴重な一冊

この本は、私の周囲の同業者からの評価が真っ二つに分かれています。そのうえで、私の感想は「読んでよかった」のひと言につきます。
子どもたちから笑いを引き出し、ショーに参加したくなるための心理学的視点を知ることができる貴重な一冊
です。パフォーマンスに関する書籍はあまり多くありません。特に子ども向けのパフォーマンスの理論書は少ないです。心理学的な観点から原理原則を丁寧に説明してくれる本書は、非常に貴重な一冊です。
私が特に大事だと思ったのは
エンパワーメント
という考え方です。子どもが本来持っている力をマジックを通じて引き出すことの大切さを学ぶことができます。
エンパワーメントの考え方を学んだことで、いわゆる客上げだけがショーに参加する方法ではないことを知ることができ、私のパフォーマンスも格段に盛り上がるようになりました。
私はジャグリングがメインで、ショーの中でマジックのウェイトは小さいですが、マジシャンに限らず、保育園・幼稚園・子ども会など、子ども向けのパフォーマンスをするあらゆるジャンルのパフォーマーが一読する価値は十分あると思います。
具体例としてあげられているマジックについては、文化に合わせてアレンジを
この本は、私の周囲の一部のマジシャンには必ずしも評判がよくはありません。その理由は、具体例としてあげられているマジックが日本ではウケの悪いもので、本全体の内容も信用できないと感じられるからのようです。
本書に書いてあるマジックをそのまま演じるのではなく、日本にいる子ども達にもウケるようにアレンジを加えるか、もっとウケのいい演目に変えるといった工夫が必要なのも間違いなさそうです。
海外と日本では文化が違うので、個別のマジックに関してはウケ方が違うのは当然です。しかしながら、日本でウケの悪いマジックが入っているからといって、本書全体の価値が落ちることはありません。
この本の一番の特徴は、大人向けのショーとは異なるキッズ・ショーの理論的観点を丁寧に解説していることであり、基本となるコンセプトを知ることに価値がある
と私は思います。
マジックやジャグリングの技術に自信はあるのに、子ども向けのパフォーマンスに苦手意識のあるマジシャン・大道芸人・パフォーマーは、一度は読んでも損しない一冊です。