今日の投稿も書評・ブックレビューです。今日は私の専門である笑いと健康にも深い関連があるウェルビーイング・幸福学をわかりやすく知ることができる一冊です。
本日取り上げるのは、
友原章典著「実践 幸福学:科学はいかに「幸せ」を証明するか」NHK出版 2020年
です。
※一部ネタバレを含みます。
幸福は経済学・心理学・社会学で今一番ホットなテーマの1つ

「実践 幸福学」の著者は、国際経済学・行動経済学が専門の友原章典氏です。幸福に関する経済学的研究のみならず、ポジティブ心理学や神経科学などの隣接領域の研究を幅広く紹介しています。
構成は以下の通りです。
- 第1章 誰がいったい幸せか
- 第2章 幸せとは目指してつかももの?
- 第3章 幸せとはありのまま受け入れるもの?
- 第4章 自分に合った幸せを見つける
幸福学という言葉に何となく違和感がある人もいるかもしれません。この本のテーマは
ウェルビーイング(WellBeing)
に関する内容です。ウェルビーイングは、単に疾病がない、金銭的な貧困がないだけでなく、身体的・精神的・社会的観点からより豊かな生活のありかたを示す概念で、日本語の「幸福」よりも幅広く包括的な概念です。しかし適切な日本語訳が存在しないため、日本では「幸福学」という呼び方が定着しつつあります。
ウェルビーイングは経済学のみならず、心理学、社会学、神経科学など様々な分野で学際的な研究が進んでいます。今一番熱いテーマのひとつと言っても過言ではありません。
巷で最近よく耳にする「ポジティブ心理学」も、ウェルビーイングに関連した研究分野です。
マインドフルネスについても知ることができる一冊

私が感じた「実践 幸福学」の特筆すべき点は以下の2つです。
・マインドフルネスについて詳しく知ることができる
・自分に合う幸せの見つけ方を年齢で変わるライフステージごとに提唱している
今この瞬間に意識を向ける方法としてマインドフルネスが注目されています。「実践 幸福学」の第3章は、マインドフルネスに焦点を当てています。
第一世代から第三世代のマインドフルネスの特徴や変化について詳しく解説しており、マインドフルネスの入門書としても読むことができます。
また、第4章では、ウェルビーイングの研究に基づき、ライフステージに応じた自分なりの幸せの見つけ方を提唱しています。タイトルに「実践」という文字が入っている通り、単なる座学ではなく、実践的な方法を解説したいという著者の願いも伝わっています。
これを言っては元も子もないのかもしれませんが、究極的には幸せの形は人それぞれであり、単一の考え方を誰かに押し付けることはできません。しかしながら、よりよい生き方を探るためのヒントが詰まっています。
本書に書いていることに全部従うというよりは、ひとつでも自分に合ったものを試しながら、よりよい人生を模索していくための手引書として手元に置いておきたい一冊
であると言えるでしょう。
withコロナ時代の「つながり」はどうなるか、今後の研究に注目
本書のもう一つの特徴は
人と人とのつながりの大切さ
を強調していることです。単に友人が多ければいいという訳ではありませんが、つながりやソーシャル・サポートが重要であることは、ウェルビーイングの研究においてはもはや定説となりつつあります。
しかしながら、新型コロナウイルスの影響が世界全体に暗い影を落としています。「実践 幸福学」はコロナの影響が大きくなる前に書かれたものです。つながりのあり方にも今後大きな変化が起こるでしょう。
物理的な意味での人との接触を避けることが求められる中で、孤立感・疎外感を感じることなくつながりを維持するにはどうすればよいのか、著者の友原先生を始めとした研究者による更なる研究の進展も期待したい
と思います。
※「実践 幸福学」のアマゾンでのリンクはこちらです。
実践 幸福学 科学はいかに「幸せ」を証明するか (NHK出版新書 612)
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