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今回取り上げるのは、
蝦名玲子著「ストレス対処力SOCの専門家が教える”折れない心”をつくる3つの方法」大和出版 2012年
です。
SOCを知ればストレスへ対処する力が上がる

「”折れない心”をつくる3つの方法」は、ストレス対処力と密接に関連した概念である
SOC(首尾一貫感覚)
について、わかりやすい語り口で解説した実用書です。
首尾一貫感覚?なにそれ?
と思う人も多いかもしれませんね。SOCはsense of coherenceの略語です。coherenceがものすごく日本語に翻訳しにくい言葉で、直訳すると「首尾一貫した感覚」になります。もう少しかみ砕いた表現をすると
人生に起こる様々な困難に対して一貫した捉え方ができ、様々な助けを借りながら乗り越えていける感覚
と思えば、しっくりします。本書はSOCを構成する3つの力について、具体例を交えて解説しています。
本書の構成は以下の通りです。
- 序章 「折れない心」になれる!ストレス対処力”SOC”って何?
- 第1章 つらさの原因が見えてくる!「わかる感」の高め方
- 第2章 気分がちょっぴりラクになる!「できる感」の高め方
- 第3章 自然に元気がわいてくる!「やるぞ感」の高め方
- 第4章 実は”環境”も大切!それでもうまくいかないときの特効薬
- 第5章 [ケーススタディ]”SOC”に出会えて本当によかった!
- 終章 もう、これで何があっても大丈夫!打たれ強い自分になる15の質問
巻末には自分自身のSOCの状態を知ることのできるチェックシートもついています。
3つのキーワードでストレス対処力を向上

SOC(首尾一貫感覚)は、以下の3つの要素からなります。
- 把握可能感
- 処理可能感
- 有意味感
……またまたわかりにくいですよね。著者の蝦名さんは、この3つを以下のように言い換えています。
- わかる!
- できる!
- やるぞ!
これで一気にわかりやすくなりました。
大きな困難に直面した時に
今自分はどのような状況なのかがきちんとわかり、他の人の力も借りながら自分ならできると思えて、自分にとって意味のあることなのでやるぞ!と思える
ことが、折れない心を作る秘訣です。
本書では、著者が研究の一環でクロアチアの内戦を経験した人へ行ったインタビューの実例をまじえながら、「わかる・できる・やるぞ」の3つの感覚の高め方を具体的に解説しています。
大きな問題に直面した時に、自分の力で人生を切り開いていきたいと思った時に、SOCを知っておくことはものすごく役に立ちますが、イマイチ市民権を得ていないのは、「首尾一貫感覚」という翻訳があまりにもわかりにくいせいでしょう。
さて、折れない心といえばレジリエンスでは?と思った人も多いのではないでしょうか。概念として重なり合う部分も多いです。心理学者を目指すのでない限り、レジリエンスとSOCのどちらがより優れているか厳密に比較することにあまり意味はないと私は思います。どちらも知っておいて損はないです。
大きな問題があるといつもテンパってしまい、次こそちゃんと乗り越えていく力を身につけたい!と思ったら、本書を読めば道筋が開けたような感覚になるに違いありません。