遊びと文化について真面目に考える古典的名著2選。ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』&カイヨワ『遊びと人間』ブックレビュー

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遊びやレクリエーションに対して、いいイメージを持っていない大人も多いです。仕事で手を抜くと、「遊びじゃないんだから、真剣にやれ!」と怒られることも多いですよね。

でも、遊びやレクリエーション、さらには芸術活動も含めた創造的な営みは、人間が生きていくうえで欠かせないものです。遊びの意義を大真面目に研究した巨匠がいます。ヨハン・ホイジンガと、ロジェ・カイヨワです。

この記事では、

と題して、2人が書いた名著を紹介します。

取り上げるのは、

  • ヨハン・ホイジンガ著『ホモ・ルーデンス』(里見元一郎訳・講談社学術文庫)
  • ロジェ・カイヨワ著『遊びと人間』(多田道太郎・塚崎幹夫訳・講談社学術文庫)

です。

とても硬派な内容ですが、遊びやレクリエーションの意義を深く考えたい人におすすめの書籍です。

◎記事を書いたのは(サイト運営者の経歴)

この記事を執筆したのは、「大道芸人たっきゅうさん」です。笑いと健康に関する講演会を全国で多数行っています。入院中の子どもたちを訪問し、芸術と遊びの時間を届けるNPO法人「スマイリングホスピタルジャパン」のメンバーです。親子向けの大道芸レクリエーションのワークショップも行っています。

さらに詳しい経歴は、「プロフィール」をご参照ください。

大道芸人たっきゅうさん・プロフィール

https://laugh-and-health.com/profile/

最初に取り上げるのは、

  • ヨハン・ホイジンガ著『ホモ・ルーデンス』(里見元一郎訳・講談社学術文庫)

です。

ヨハン・ホイジンガは、オランダの歴史学者です。『ホモ・ルーデンス』は、1938年に出版された本です。第二次世界大戦へと向かいつつある重苦しい時代に書かれました。

人間のことを「ホモ・サピエンス」(知性人)と呼びます。理性こそが人間の特質であるといった意味合いです。

それに対して、学問や芸術などの創造的な営みを含めた「遊び」を大切にする心こそが、人間生活を豊かにするものだという意味で、ヨハン・ホイジンガは、「ホモ・ルーデンス」(遊戯人)と命名しました。(ここまでは、高校の倫理の教科書にも載っている内容です)

書籍『ホモ・ルーデンス』の主張は、以下の点に集約されます。

人間の文化は遊びにおいて、遊びとして、成立し、発展した

ヨハン・ホイジンガ著『ホモ・ルーデンス』(里見元一郎訳・講談社学術文庫)p.3

私たちは、遊びは真面目ではないものとして低い評価をつけがちです。そうではなく、遊びこそが人間の特質なのだとホイジンガは主張します。

ホイジンガは、遊びを以下のように定義しました。

  1. 自由な行為である
  2. 仮構の世界であり、利益を度外視する
  3. 時間的、空間的に限定される
  4. 規則を持ち、それを守る点では真面目で真剣である
  5. 秘密を持ち、ありきたりの世界とは別物である

裁判・知識・哲学・芸術などの中に遊びの要素が含まれていることを、書籍全体を通じて論証していきます。戦いの中にすら、ルールを尊重する遊びの要素が含まれていると言います。

そして、最終章では、近代産業、科学、スポーツ、国際政治から遊びの要素が失われ、敵ー味方、損得の関係に突き動かされる時代に入ったことに対して警鐘を鳴らします。先ほども記したように、書籍が出版されたのは1938年です。時代の閉塞感に対して一石を投じるのが、ホイジンガの本当の狙いだったのではないかと、私は感じました。

ホイジンガが遊びと呼ぶものは、単なる余暇や気晴らしの娯楽を指すのではありません。真面目さや神聖さをも含み、人間の品位を支える行為を、遊びに見出しています。

効率や競争を重視し心の余裕が失われつつある現代社会を考えるうえでも、示唆に富んだ一冊です

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続いて取り上げるのは、

  • ロジェ・カイヨワ著『遊びと人間』(多田道太郎・塚崎幹夫訳・講談社学術文庫)

です。『ホモ・ルーデンス』と並ぶ古典的名著です。1967年に出版された書籍です。『ホモ・ルーデンス』の内容に敬意を払いつつ、独自の遊び論を展開した内容です。

『遊びと人間』では、まず遊びの定義を行います。もちろん厳密には異なりますが、『ホモ・ルーデンス』の定義と共通する部分も多いです。

その上で、カイヨワは、遊びを以下のように分類します。

  1. アゴン(競争の遊び):スポーツ競技やチェスなど
  2. アレア(運の遊び):ルーレットや富くじなど
  3. ミミクリ(模擬の遊び):子どもの物まねや、演劇、見世物など
  4. イリンクス(眩暈の遊び):子どもの「ぐるぐる遊び」やメリー・ゴー・ラウンド、空中ブランコなど

遊びの持つ本質的な衝動に基づいた分類です。

運任せの遊びや、眩暈をもたらすような感覚の錯乱にすら、遊びの本質的衝動を見出しているのが、カイヨワの遊び論の大きな特徴です。

ホイジンガは、遊びを文化の品位を保つ行為として捉えました。それに対して、カイヨワは、眩暈の感覚のような、文化の品位とは関係ないものも遊びの中に含めています。どちらが優れているかは読者の判断にゆだねるとして、「遊び」という言葉の射程の違いが、2冊の大きな違いとなっています。

なお、

カイヨワの遊びの4分類は、今でも多くの文献で引用されており、様々な遊びの本質を考察する際の基盤となっています

たとえば、日本レクリエーション協会が監修した『遊びの大事典』(東京書籍)は、カイヨワの分類に基づいて、日本の遊びを網羅し、歴史的変遷をまとめた書籍です。

『ホモ・ルーデンス』も、『遊びと人間』も、古代から現代までの歴史を遊びの視点で考察したスケールの大きい書籍です。難解で一度では理解できないところもありますが、人間にとっての遊びの意義をじっくり考えたい人におすすめの書籍です。

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このサイトでは、遊び・笑い・レクリエーションに関する記事を多数掲載しています。ぜひ合わせてご覧ください。

◎『夢中になれる小児病棟』ブックレビュー

遊びや創造的な営みは、人間にとって欠かせないものです。小児病棟という制約の多い環境を訪問し、入院中の子どもと一緒に遊ぶ活動を行う団体があります。認定NPO法人スマイリングホスピタルジャパンです。

夢中になれる小児病棟』(英治出版)は、スマイリングホスピタルジャパンの代表理事・松本惠里さんが、活動の理念や実態をまとめた書籍です。このサイトを運営する「大道芸人たっきゅうさん」も団体のメンバーです。

遊びの意義について考えを深めたい人、小児科でのボランティアに興味がある人におすすめの書籍です。

◎「笑いと治癒力」ブックレビュー

遊びと同様に、笑いも人間の営みに欠かせないものです。笑いと健康の礎となった本があります。ノーマン・カズンズの『笑いと治癒力』(岩波文庫)です。

この本は、世界的ジャーナリストであるノーマン・カズンズ氏の闘病体験記です。この本がきっかけとなり、生きる意欲が治癒力に与える研究が大きく進展しました。

このサイトでは、遊びやレクリエーションのやり方を多数掲載しています。言葉遊びと身体を動かすレクの記事が人気です。主にシニア世代向けの内容ですが、世代を問わず楽しめます。「記事一覧」にリンクを掲載しましたので、ご利用ください。

言葉遊びの高齢者レクリエーション・記事一覧

https://laugh-and-health.com/2021/04/15/20210415/

運動&体操系のレクリエーション・記事一覧

https://laugh-and-health.com/2022/11/19/20221119/

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「大道芸の笑いを小児医療や高齢者施設にも!」をモットーに活動する通称「大道芸人たっきゅうさん」です。京大卒なのに大道芸人です。「笑いと健康」に関する講演の講師として全国の老人クラブを訪問しています。 【テレビ・ラジオ・新聞等の実績】 ぐるっと関西おひるまえ/ちちんぷいぷい/Music Edge/京いちにち630/おやかまっさん/笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ/京都新聞/朝日新聞/毎日新聞/産経新聞/大阪日日新聞 等多数 【取得資格】 健康生きがいづくりアドバイザー ・ケアストレスカウンセラー ・レクリエーション介護士2級

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