このサイトでは、笑いと健康、レクリエーション、ストレスケアに関連した書籍の書評・ブックレビューも行っています。
今回紹介するのは、
ノーマン・カズンズ「笑いと治癒力」岩波現代文庫 2001年
です。
笑いと健康の関係については、21世紀に入ってから盛んに研究が行われていますが、本書はその礎となった一冊です。
※ノーマン・カズンズ氏の生涯については、改めて記事を作成する予定です。
膠原病からの回復の道のりを自ら省察して生まれた一冊

「笑いと治癒力」は、ノーマン・カズンズが1964年に膠原病を患った際の闘病の記録から生まれた書籍です。ノーマン・カズンズ氏は「サタデー・レビュー」の編集長を長く務めたジャーナリストです。
膠原病は大変な痛みを伴う病気で、免疫系のトラブルから生じる自己免疫疾患のひとつです。発病当時、医師から完治するのは500人に1人だと宣告を受けてしまいます。
しかし、ノーマン・カズンズ氏はこのように考えます。
…わたしは大いに考えさせられた。その時までわたしはどちらかと言えば、しかしこうなってみると、否でも応でも、自分で何とかしなければならないという気になった。その五百人中の一人になるつもりなら、当然のこと、単に受身の傍観者に甘んじていてはだめだと私は思った。
ノーマン・カズンズ『笑いと治癒力』岩波現代文庫 2001年 p.6より引用
自分で探求を重ねるうちに、ネガティブな情緒が体に悪影響を及ぼすならば、ポジティブな情緒は体によい影響を及ぼすに違いないと考えます。
そして、
ポジティブな情緒を増やす手段として、笑いを増やすことを実践します。
また、ビタミンCの効果にも注目し、ビタミンCの大量摂取も試みました。
その結果、サタデー・レビューの編集長の職務に無事に復帰を果たしました。
自らの闘病体験をまとめた論文が「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」という雑誌に掲載され、大変な反響がありました。「笑いと治癒力」は、この論文がベースになっています。
「笑いと治癒力」の構成は以下の通りです。
- 第一章 私の膠原病回復記
- 第二章 神秘的なプラシーボ
- 第三章 創造力と長寿
- 第四章 痛みは究極の敵ではない
- 第五章 三千人の医師から学んだこと
第一章は「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」の論文、第二章以降は、ノーマン・カズンズ氏の更なる考察です。
文章からにじみ出る生への意欲と探求心
この本から伝わってくるのは、カズンズ氏が持つ
生への強い意欲が人間の自然回復力を高めるという信念
です。
カズンズ氏はポジティブな情緒を増やす手段として笑いに着目しました。しかし、笑いそのものよりも、困難があっても自らの人生をよりよく生きようとする意欲こそが大事なのだという確信を持っていることが伝わってきます。
また、
医師の役割は治療だけではなく本人の回復への意欲を引き出すことであり、患者も医師と共に積極的な努力が必要である
と考えており、医師と患者との関係のあり方にも一石を投じています。常識にとらわれないカズンズ氏の探求心には感動すら覚えます。
もちろん、今現在大変な病気で辛い思いをしている方に向かって生への意欲が大事といった言葉を何の配慮もなく投げかければ、かえってその人を傷つけてしまうかもしれません。カズンズ氏も書籍の中で気持ちが揺れ動くことがあったと書いています。そういったことには細心の注意が必要だと思います。
日本でも病院内での笑いや遊びのボランティアの活動も増えてきました。自らの活動の理念を再確認するために、「笑いと治癒力」は必読の一冊です。
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※笑いと健康について学べる他の書籍については、こちらの記事をご覧ください。
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